Private jetフライトアテンダントとして地球のあちこちを旅するMJのつれづれ日記。***すべての文章、画像の権利はMJにあり、無断転載を禁止します。***   お問い合わせはmaikojazz*excite.co.jpまで。


by maikojazz

第四十一回 機上のバイオリン弾き

今回の旅のキャプテン(機長)はドイツ系アメリカ人のHさん。彼は60歳を過ぎているのに、パワフルで陽気なおじさんだ。フライト中にコックピットで歌を歌うのはもちろん、微妙に上手な日本語で「MJサーン、イキマショウ、ドウゾー」「ソウデスネー」と話しかけてくる。まるで常によっぱらい?そのテンションの高さには脱帽だ。


昨夜。Guamから羽田に移動する機内で彼はもう1人のpilotに操縦を委せ、キャビンにやってきて突然バイオリンケース(ステイ中に部屋で弾くらしい)を持ち出した。その時点で私は若干憂鬱な気分もありつつ、作り笑顔でたった1人の観客になった。Pilotsのご機嫌取りも楽じゃないなあ~、なんて思いながら。

ケースからバイオリンを取り出して、彼はすっと慣れた様子で構える。
手慣らしに軽く弾いている姿は... あれ?上手だ。私に「日本の歌」という楽譜帳を渡して「好きなのを弾いてあげよう」というのでオーソドックスに「さくら さくら」を選ぶ。彼はなんと初見で完璧に「さくら さくら」を弾き、最後にはアドリブで旋律をくっつけてまでくれた。

「すごいねH、自分の操縦する飛行機でこんなに上手にバイオリンを弾く人がいるなんてすごいよ!」憂鬱のかけらはどこかにすっと吹っ飛んで、私は思わず拍手。「いやー、若い頃はもっと上手だったんだ。40歳くらいまではね。町のオーケストラでも弾いてたんだよ」とファイルから白黒の写真を出して見せてくれる。なんとびっくりな美青年がバイオリンを弾く姿。彼とは私の初フライトの機長でもあったのに、3年近く一緒に働いていたのに、全然知らなかった。。。
「この数ヶ月でまた弾こうという気持ちになったんだ」「実は、これは昔のガールフレンドの形見のバイオリンなんだ。僕が持っている4つのバイオリンの中でも、とびきりいい音が出るんだよ」。
亡くしてしまった愛する人のバイオリン。どんな気持ちだろう。きっと、時間が彼を癒してまた手にする気持ちが芽生えたということかな。




私にはひとつ、宿題がある。「さくら さくら」の歌詞をローマ字でかなをふって、一緒に歌うこと。「ホノルルですることがひとつ増えたね」と笑う機長。なんだか愛らしい。音楽好きなcrewで楽しい旅になりそうだ。
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by maikojazz | 2009-01-09 17:41