人気ブログランキング | 話題のタグを見る

Private jetフライトアテンダントとして地球のあちこちを旅するMJのつれづれ日記。***すべての文章、画像の権利はMJにあり、無断転載を禁止します。***   お問い合わせはmaikojazz*excite.co.jpまで。


by maikojazz

第百回 初フライトのこと。-Maldivesへ-

*********************************************
第百回だなんて!細々と綴るこのブログ、見て下さって
本当にありがとうございます。しばらくは「ライブ中継」の
できない状況ですが、今後ともどうぞよろしくお願い致します。
MJ
*********************************************





初心に返って、この会社での初フライトのこと。

入社して数週間。現地8:00(日本の朝7:00)から始動するオフィスに合わせ、朝起きたらまずスケジューラーからのメールをチェックする習慣ができた頃。

「最新のスケジュールをアップデートしました」というメールの添付fileを確認すると。
Trip1295の欄に私のコードネーム「MM1」。 ということは、それが私の訓練便。シンガポール人crewのLitaを教官に特別編成で飛ぶらしい。8泊10日の長いtripだけど、、行き先はモルディブ、単純往復で滞在中は完全オフ。水着を持っていかなくちゃ!



スケジュールを管理するスタッフに連絡し、まだ会った事のないLitaと電話で「はじめまして」の挨拶をする手はずを整えてもらう。シンガポール航空で9年乗務した後にprivate jetの世界に入ったというLitaの声は明るく、私の心配を「don't worry」を繰り返してくれる優しい人だった。30分ほど電話で仕事内容の確認や他愛のないおしゃべりをしてその日は終わった。


フライト当日。実際に会ったLitaは中国系の、背が高くてさばさばした口調にぴったりのショートカットの女性。一緒に飛ぶ(のちに機上のバイオリン弾き、と称される)captain Hさんと、実は同い年だと後で判明する副操縦士のCさんも、とても気さくに挨拶を返してくれた。これだけで少し不安と緊張がほどける。


私たちが乗務する飛行機に、基本的にFAは1名しか必要とされない。そのため、今回の私の席はジャンプシート。Cockpit crewといえば巡航中のほとんどをおしゃべりに費やす姿しか見たことない(もしこれを読んでいるcockpit crewがいらしたらゴメンナサイ!)...けれどさすがに離陸・着陸時は違う。当然ながら彼らの本領発揮はこの時なのだ。複雑に並んだ機械を前にきびきびと管制塔とやりとりしながら、さあ準備万端。


第百回 初フライトのこと。-Maldivesへ-_f0183347_1559184.jpg





深夜の羽田空港。緑と青のランプが機体を誘導し、遠くに見える東京タワーや観覧車に見送られながら離陸。轟音と共に体に感じる懐かしい重力。 しばらくすると、東京湾に浮かぶ船の小さな灯りや、街のネオンが眼下に広がる。 ちょっと感慨深い、新しいキャリアの始まり始まり。


夜中に出発のフライトなので、お客様はサラダとメインだけで食事を済ませ、あとは到着までお休みになるとのことだった。私達もサービス後は食器を洗い、クルー全員の食事を済ませ、あとは寝るだけだった(笑)。9時間48分のフライト。前の会社だったら休めるのはいいとこ1時間半だったけど、Litaは「そうね、じゃあ3時間ずつ休憩しようか」!!!えっ、そんなに寝ていいの!? 本来のFAが座るseatをフラットになるまで倒し、枕代わりのクッションと毛布を用意して、ギャレイとの空間を遮るカーテンを引く。余計な灯りが消えたその空間で、窓の外をふと見るとオレンジの光が地平線を輝かせ始めていた。


第百回 初フライトのこと。-Maldivesへ-_f0183347_15594767.jpg






モルディブに着いてから、お客様は「フルーツだけ食べようかな」ということで、地上で朝食サービス。これも今までの概念を覆す新しいサービスだ。
「Enjoy your stay!」と降りて行くお客様を見送った後、FAは機内の清掃と不要な食料の破棄。「サングラスは持ってきた?」「もちろん!」「外はまぶしいからかけたほうがいい」ということで、機内から降りる4人のcrewは全員サングラス着用。がらんとした早朝のモルディブ・マーレ空港。地上係員に先導されて入国審査を済ませ、外に出ると雨上がりの瑞々しい空気と咲き乱れる南国の花たち、そして私たちが滞在する島へのジェットボートが待っていた。

ボートに乗り込むとすぐ「今回の訓練便で気づいた点や改善すべき点があったらアドバイスを下さい」と(A社の新人時代と同様に)真面目に聞いた私にLitaは半ばびっくりしたような顔で「ないわよ」と笑う。「滞在中に、ビーチででもcateringの仕方を教えるわ。出発の2日前にはリゾートのシェフとミーティングをするから、その時にも同席してね。それだけよ」


20分弱ほどで到着した小さな島。ヤシの木が生い茂り、珊瑚が砕けてできた白い砂が涼しげ。さて、初モルディブでの滞在が始まる。

(次回に続きます)
by maikojazz | 2009-11-17 16:14