Private jetフライトアテンダントとして地球のあちこちを旅するMJのつれづれ日記。***すべての文章、画像の権利はMJにあり、無断転載を禁止します。***   お問い合わせはmaikojazz*excite.co.jpまで。


by maikojazz

第百七回 戻りたい場所 -Athens, Greece- 後編

(前回からの続きです)

その地下鉄に乗っていればそのまま終点のピレウス港まで一本で行けるはず。私は周りの人たちをさりげなく観察したり、ギリシャ文字の駅名と脇に付いたローマ字を比べて読む練習?をしたりしていた。


あと一駅で終点、のとある駅。停車前から何度かギリシャ語の車内放送が流れ、いざ停車すると一斉に乗客は降りて行く。「???」何も分からずに車内に残ってみるものの、いっこうにドアがしまる気配もない。なんだかおかしいなあ、と思い何となくホームへ降り立った。そして向かいに止まっていた電車の車両に乗り換えてみる(無謀)。こちらも動く気配なし。なんなのだろう?


その時、ドアのそばにいた青年がたどたどしい英語で「ここが終点」と教えてくれた。「あら、そうなの?私はピレウス港に行きたいのだけれど」と返した私に彼は「... 工事。...故障。」こんな感じで単語を並べ、ピレウス港に最寄りの駅が閉鎖してしまったということを教えてくれた。なにげなく一緒に階段を上り、一緒に改札を出たところでその青年は「同じ方向に行くから、バスに乗ろう。この切符でバスにも乗れるから」とバス停に誘導してくれた。


この時にもちょっと警戒はしていたものの、私たちの周りにもたくさんの乗客がバスを待って行列を作っている。どうやら本当に電車はピレウスまで行かないので臨時のバスが出ている模様。長い行列の後に3台目のバスにようやく乗り、話をしながらピレウス港を目指すことにした。


彼は「ピレウス港の近くにあるレストランで働いているから、同じバス停まで行く」ということ、大学で英語を勉強したことなどを話し、私は日本から来てヨーロッパを回っていることなどを話す。私よりも片言の彼のために、ゆっくりはっきりと発音し、何度か努力しても分からない言葉は「まあいいや」と笑って済ましながら20分ほどバスに揺られた。


「本当にありがとう、助かったわ」と、バスを降りたその場所でお礼を言った私に彼は「いいんだよ、ほらあっちに見えるのがピレウス港だ。入り口で行き先を言えば何番の停留所って教えてくれるからね。じゃ、良い旅をしてね。さよなら」と、ナンパするでもなく(笑)あっさり手を振って私を見送ってくれた。 ...なんて良い人なんだ、ギリシャの人たち!






あらかじめ取ったエギナ島行きの船のチケットに書かれた出発時刻ぎりぎりでピレウス港に到着、走って船に乗り込んだというのに、、、その後15分くらいしてようやく出発する船。ヨーロッパ時間がここにも流れていた(そしてこれは後に何度も経験することになる)。


カメラ片手に外に出て風を受けながら周りの風景なんかを撮影、髪がぐしゃぐしゃになりながら中に戻る。ギリシャ文字の書かれたミネラルウォーターの大きなボトルからそのまま飲む。1時間弱で、お目当てのエギナ島へ到着。

聞くとこの島には車がないそう。おじさんが「バイクレンタル。12ユーロ」とか、「ロバの馬車で観光しないか」と到着した観光客たち相手に商売を始めるなかで、私はまずおなかがすいたので市場のほうへ歩いてみた。適当なカフェでシーフードがぎっしり詰まったサンドイッチをつまみ、たくさんの猫がうろうろするのを喜んで見つめながらこじんまりした住宅街を歩いては写真を撮った。普通のおうちの柵にたくさんのタコが干されているのにびっくりしたり、逆に東洋人の女が一人で歩いている姿を珍しく見つめられたりしながらお散歩する。学校があったり、ちいさな商店でガムを買ったり。白い壁に、青いドア。


たまたま入った土産物やさんで、「このあたりで取れるスポンジ」つまり海綿を10個買うから、と値引き交渉。またこの島はピスタチオがよく取れるということで、ピスタチオもたくさん買った。
海辺に面したオープンカフェで、地元のおじさん数人がボードゲームに興じる姿があった。挨拶して近づいてみると、小学6年生の時にはまったバックギャモンだ。彼らはお金をかけて勝負していたけれど(笑)。




船の出航まで少し時間があったので、海に足をひたしてみた。透明な、ゆらゆらした水面をわざとばしゃばしゃさせる。近くにある教会は、丸いかたちの屋根。なんだか名残惜しいな、と歩きながら小さな町を見渡す。港に着くとまた、ロバをひいたおじさんが同じ格好で木陰に寄りかかって、ピスタチオを食べていた。本物ののんびりした時間が、そこにある気がした。



また船に乗って、(今度はピレウス港の最寄り駅からちゃんと地下鉄が出ていた)地下鉄を乗り継いでホテルに戻る。受付のおじさんに「エギナ島に行ってきた」と話して小さなピスタチオの袋を渡す。

数分後、部屋に内線電話が来た。「申し訳ないけれどもう一度出てきて」... 宿泊客を呼び出すとは、とちょっと不審に思いながら受付に行くと、「ピスタチオのお礼」と、ギリシャの絵はがきセットと近所のスブラキやさんの割引チケットをくれた。そういえば晩ごはんがまだだったなあ、と思いその足でスブラキを食べに行って、一人でテーブルにぼんやりと座り、気づいた。


ギリシャの人たちは本当に優しいんだ、と。
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by maikojazz | 2010-01-04 17:41 | 旅先; 東ヨーロッパ